餓鬼(キタイハズレ さん)
無料公開されている箇所を読ませていただきました。
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■ 今回拝読した素敵な作品はこちら餓鬼(作者:キタイハズレ)
あらすじページ:
https://yurukiyoki-writer.amebaownd.com/posts/16729618?categoryIds=4392641
試し読みページはこちらから:
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12669186
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カリギュラに近いでしょうか。
確実な恐怖が待ち構えているのに、読み進めるほどに誘惑があり、帰ってこれなくなる。
引き寄せられる物語の感想を、この場をお借りして伝えさせていただきます。
まずは、冒頭から。
何事においても最初のインパクトは大切ですが、この小説は威力がより顕著だと感じます。
『私は母を殺しました。食べるために』
私がこの言葉から食らったのは、単なるに異質さに留まりませんでした。
親は殺せません。親は食べれません。
当然です。したくない、も内包しています。
しかし、私はここで、自身を振り返ります。
他者を傷つけたいと思ったことがないとでも?
私の知らないところで、死んでしまえばいいと思った。
大切な何かを守ろうとして感情のメーターが振り切れれば、私の身体はとんでもない攻撃性をもち、そこに理性すら同化してしまう。少なからず生きてきたことで、私はそれを自覚しています。
状況に支配されれば、私だって人を殺す――それがないとは言い切れない。
つまり、殺しはあり得ないと否定しきれず、冒頭の言葉は私にとって身近なところにある。
ゆえに、私は冒頭に惹かれ、焦がれ、作者様が描いたその奥へ……。
足が勝手に動きます。
踏み込んだ先には――冒頭で書かれた、母を殺しただろう『父』の印象が、『彼の娘』の視点から描かれています。
父親の一般とは違った部分が、長所として働かず、幼いころから彼を蝕み続けた。
父は苦しんでいた。
だから、事が起こってしまった。
私の頭はまるで、川に流されたかのように、ゆらりといつのまにか疑問を抱きます。
詳しく教えて?
どうして殺してしまったの?
私は小説の奥へ進みだしてから、ずっとそれに呑まれます。
そう。
父親の内面を少しずつ訴える、娘さんのその語りが、私に疑問をやめさせてくれないのです。
しかも、疑問の勢いは衰えず、常にパワーを持っている。
そして文章の終わりに書かれたこと。
『父親が書記を残した。それを読めば真実が分かる』
それを読者に伝え、ここで試し読みは終わりを迎えます。
ここまで引き寄せる物語は、積み重ねるものがあるからこそ、成し得ることだと考えます。
すごい。こんなに引き寄せる物語があるのか。
感嘆し、私は改めて物語を振り返りました。
そして、再び私の目に留まるものがありました。
『私は母を殺しました。食べるために』
気になって仕方がない。
作者様がこの言葉にどれだけの意味を込めたのか。
私は想像し、考察し、奥へと進みました。
『餓鬼』という物語を読めば、まず間違いなく私と同じように、進み、戻れない方がいらっしゃるでしょう。
確信と共に、私の感想を締めさせていただきます。
【静原認】
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・サークルTwitter:https://twitter.com/AM24002
・2021年5月16日文学フリマ東京「エ-31」にて
お待ちしています!
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