AM 24:00@文フリ東京「エ-31」

📚一次創作サークルのAM 24:00です!

📖「もうこんな時間!?」
皆に夢中になってもらえる小説を書いています。

📗「夢中で書いていたら、もうこんな時間!?」
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📕『小説だけじゃない、〝人生に夢中になっている〟6人で活動中!』

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記事一覧(7)

『Wonderful Golden Week』

   『Wonderful Golden Week』                                  モンチ03   2021年4月29日、GW初日。「ついに……ついにこの日がきた!」 今日から始まる7連休。 会社員2年目の中島圭太はこの連休を思う存分堪能する為に、絶対に仕事を残さないと心に決め、連休前の会社の激務をヘロヘロになりながらもこなし、ようやく待ちに待ったGWを迎える事が出来た。「やるぞやるぞ~。絶対クリアしてやるからな~」 鼻歌でも歌いそうなテンションで据え置き型ゲーム機を用意する圭太。彼はこの大型連休を利用して、楽しみにしていた新作ゲームをクリアしようと意気込んでいる。 その為の準備は万端だ。7日分の食料(カップラーメン、冷凍チャーハン等)は勿論、お菓子やジュースも大量に買い込んでいる。電気を消し、カーテンで朝日を遮って部屋の中を暗くして雰囲気を作る。 さあ始まりだ。 彼等(キャラクター)と共に、長い冒険へ繰り出そう。 わくわくドキドキしながらゲームソフトをセットし、電源をつけようとしたその時――。――ピンポーン……と、無慈悲なインターホンの音が鳴り響いた。「…………………………………………」 電源を入れようとしていた圭太の手がピタッと止まる。 インターホン、それは誰かしらが来訪を告げる時の合図音だ。しかし、この家に誰かが訪れる予定は無い筈だ。ならば予想されるのは新聞の勧誘か宗教の勧誘か、商品販売の営業か、考えられるのはそんなところだろう。 普段の彼ならば面倒ながらも素直に対応していただろうが、今日に限っては居留守を決め込む事にした。 何故かと言えば、嫌な予感がしたから。 このGWが丸々消えて無くなってしまいそうな、そんな最悪な予感が。「……よし」 自分で納得したように頷くと、圭太は再び電源を入れ――、――ピンポーン、ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピピピピンポーーン!!!――られなかった!!「うるせえなぁ!!」 怒涛のインターホン連打に、無視していた圭太も我慢出来ずに立ち上がり、怒鳴りながらドッドッドッと大きな足音を立てながら玄関に向かう。 バンッと勢い良くドアを開けると、そこに居たのは満面の笑みを浮かべた――、「あ……姉貴……」「よっ圭太。元気してた?」 圭太の2歳上の姉である、中島夕(ゆう)菜(な)だった。 白のワンピースに、金色のベルト、茶色のハイヒール、大きめのグラサンを掛け、ピンクのショルダーバッグを掛けている姉はどこか旅行に出掛けそうな恰好をしている。いや、その予想は恐らく当たっているだろう。何故なら、夕菜の左側には大きなスーツケースがあるからだ。 突然の来訪に驚きながらも、圭太は久しぶりに会う姉に当たり障りのない話題を振る。「おう……久しぶり。どっか旅行でも行くのか?」「そうなのよ! これから友達と沖縄旅行!」「沖縄……今から……そりゃいいな。楽しんで来いよ、じゃ」GWで沖縄旅行、なんてリア充なんだ。海で勝手にウェイウェイしてくれ、俺はこれから自分の部屋でウェイウェイするから、と会話を切り上げてドアを閉めようとすると、ガンッと夕菜のハイヒールがドアに差し込まれた。「あのー、まだ何か?」「それがねー、ちょーーっと圭太にお願いがあるのよ」「……」 やはりキタ! と圭太は身構える。聞くのがとても嫌だが、彼は仕方なくドアを開けて要件を尋ねた。「一応聞くけど……何?」「いやさー、私が沖縄旅行に行ってる間、この子達の面倒を見て欲しいのよ」 と言って、迷惑な姉は背後に隠していた三匹のペットをバーン! と見せる。 そこには、ペットバッグに入った猫と犬、鳥かごにいるインコがいた。三匹のペットを目にして圭太が顔を引き攣らせていると、夕菜は怒涛の紹介を始めてしまう。「このイケメンな子がゴールデンレトリバーの五郎で、こっちのセクシーな子がノルウェージャンフォレストキャットのエリザベス。で、このキュートなインコちゃんがピーコよ。みんな賢くて良い子達だから、よろしくね!」「よろしくねって……いやいや待ってくれ。突然来られても困るよ、俺にも予定があるんだからさ!」「予定って言っても、どうせアンタはゲーム三昧でしょ?」「う……ていうか、それなら母さん達に頼めよ、俺じゃなくて!」「私もそうしようと思ったんだけどさ、母さん達も今日から夫婦水入らずの温泉旅行に行くらしくて、断られちゃったのよね。だから頼れるのは圭太しかいなのよ、ねっお願い!」「そんな事言われてもな……」「あっいけない!? もう飛行機に間に合わなくなっちゃう。このバッグに食料、世話の仕方、お金諸々入ってるからよろしく! じゃあね、お土産買ってくるから!」「あっおい! 姉貴!」 圭太は呼び止めるが、夕菜は足を止める事なく去ってしまった。「おい……マジかよ」姉が居なくなった廊下を見て呆然とする圭太。昔から夕菜は傍若無人な性格で、圭太も彼女のワガママに散々付き合わされてきた。しかし彼女も働き出し、一人暮らして立派な社会人になり少しは落ち着いたと思っていたが、全然そんな事はなかったようだ。「で……こいつ等どうすんだよ」 飼い主に置いてかれた三匹の動物達を見下ろしながら、圭太は困り果てる。身内の家族だから流石に知らんぷりは出来ないし、アパートの住人に変な目で見られる前に、部屋に上げてしまうしかないだろう。「……はぁぁぁぁぁぁぁ」 最高のGWを送る予定だったのに、迷惑な姉の所為で前途多難なGWになりそうで、圭太は深いため息を吐いたのだった。🐶 アパートの大家に問いかけたら、ペットを飼うのはOKだった。本当は申請書のような物を出さないといけないらしいが、事情を話してみたら一週間だけなら構わないとの事。その変わり、他のアパートの住人には迷惑をかけないようにと注意された。「で……こいつ等はどうするか」 目の前にいる五郎とエリザベスとピーコを見て、困ったように首を傾げる。五郎とエリザベスは既にペットバッグから出していて、各々寛いでいた。普通飼われている動物は知らない場所に連れて来られると不安で落ち着かないと聞いていたが、全くそんな事は無かった。まるで我が家のようにリラックスしている。性格は飼い主に似ると言われているが、姉の豪胆なところも似てしまったのかもしれない。 反応が無いピーコは、多分寝ているんだろう。 それにしてもどうしよう……と圭太は悩む。このままでは折角のGWがペット達の世話で終わってしまう。それは嫌だなぁと思った圭太はポンッと手を叩いて、「よし、ご飯だけ出しとけばいいか」 ナイスアイデアと言わんばかりに夕菜から預かったバッグを物色する。バッグに入っていた説明書を読みながら恐るべき速さでペット達のご飯を用意し、部屋の隅に置いておく。 ふ~と、額の汗を手の甲で拭った。「こうしておけば勝手に食べてくれんだろ。さ、ゲームを始めるか」 これでいいだろ、と圭太はペット達の相手を放棄してゲームを始めようと今度の今度こそゲーム機の電源をつけようとする。「何この部屋、狭くて暗くて臭くて最悪だわ」 つけようとするのだが、その時発せられた声に驚愕してピタっと指が止まる。(え……? 何今の、なんか人の声が聞こえた気がしたんだけど) 不意に聞こえた声に恐怖を覚える。それも、なんだか大人な女性の声だった。ちょっとエロい感じの。 しかしこの部屋には圭太しか居ない。ちょっとエロい大人な女性はどこにもいない。だから気の所為だろうと再び電源を押そうとしたら、やはり背後から人の声が聞こえてくる。「せめて部屋を明るくして、換気して欲しいわ」「ッ!!?」 バッ! と後ろを振り向く。「ていうか貴方、凄く冴えない男よね。夕菜の弟だって聞いてたからちょっとは期待してたのに、ガッカリよ」ノルウェージャンフォレストキャットのエリザベスが人の言葉を発していた。「……」 口を開けてポカーンとする圭太。これは幻聴だろうか? 今、猫が喋った気がする。 にゃおーん、というごく一般的な鳴き声ではなく、ちょっと艶めかしいというか……セレブな奥様みたいな人の言葉。(いやいやいや、ないないない。きっと何かの間違いだろ) 首をブルブル振って否定する。まさか、猫が喋る訳ないじゃないか。単なる空耳だろう。 そう信じたかった圭太だったが、人の言葉を話せるのはエリザベスだけでは無かった。五郎「この部屋何だか臭―い! それに何だか狭いし暗いなぁ。なあ圭太、こんなところに居ないで散歩連れてってくれよ! 散歩!」ピーコ「クサイ! コノヘヤクサイ! ヒェ!」「……おいおいおい、犬も鳥も喋ったぞ。どうなってんだ、俺は夢でも見てるのか? ……イテッ、夢じゃない……」 ゴールデンレトリバーの五郎が、固まる圭太の周りをぐるぐるしながらオネダリしてきてばかりか、鳥かごに入っているインコのピーコも人の言葉を喋った。 インコならワンチャン人の言葉を喋らないことも無いが、犬は絶対無理だろう。 夢でも見ているんじゃないかと思って圭太は自分の頬を抓ってみるも、現実は一切変わらなかった。 エリザベスはぶつくさ文句を垂らしているし、五郎は顔をベロベロ舐めて催促してくるし、ピーコは腹減りやがった! とかよく分からない事を叫んでいるし……。 いや待てよ、と圭太はふと我に返る。動物達の声が人語として発せられているのかそれとも勝手に認識されているのかは分からないが、まあ言っている言葉は理解出来る。であるならば、果たして一方通行ではなく圭太の言葉を動物達が理解出来るのか、平たく言えば会話出来るのか、という疑問が浮かび上がってくる。 その疑問を解消すべく、圭太は彼等に話しかけてみた。「な……なぁエリザベス。姉貴の部屋ってここより大きいのか?」エリザベス「なにお馬鹿な事を言ってるのかしら。夕菜の家は高級マンションよ、こんな安アパートより何倍も大きいわよ。それに華やかで、良い香りもするし」 エリザベスは通じる。それと地味で臭い安アパートで悪かったなとぼやいた。「五郎は今何歳?」五郎「1歳!」 五郎も通じる。それと五郎はまだ元気な子供らしい。「ピーコは男の子? それとも女の子?」ピーコ「メス!!!」 ピーコもギリギリ通じる。それとピーコは女の子らしい。(うわぁ……俺動物と喋っちゃってるよ) 夢でなく現実で動物と意思疎通が出来てしまい、何がどうなっているのか戸惑う圭太。ひとまずこれからどうしよう……と考えて、もう無視して楽しみにしていたゲームを始めよう、と開き直る。人はそれを現実逃避と言う。 圭太が文字通り現実(リアル)から非現実(ゲーム)に逃避しようとするが、動物達によって阻止されてしまう。五郎「なー圭太―散歩行こうよ散歩ー! つまんないー!」エリザベス「私もお外に出たいわ。こんな薄暗いところにいたから陽の明かりを浴びてお昼寝がしたいわ」ピーコ「ソト! ソトデル!」「あのー、今から用事があるから、少し静かにしていて欲しいんだけど……」五郎「やだ! 散歩行く!」エリザベス「アナタの用事なんて知らないわ。いいから早く出かける準備をしなさい」ピーコ「オマエニ! ジユウ! ナイ!」「ああもう分かった分かりましたよ、行くから暴れないでくれ!」 圭太が動物達に頼んでみるも、彼等は全く言うことを聞かず、実力行使に打ってきた。服を噛んで引っ張ってきたり、爪で引っ掻いてきたり、ディスってきたり。このまま暴れられては堪ったもんではないので、言う通りに散歩する事にした。(少し遊んだら疲れて大人しくなるだろ) ぱっと行ってぱっと帰ってくればいい。それからゲームを始めよう。 ペット達が人の言葉を喋るのは今は深く考えない事にした。GW前の激務で自分が疲れてそう聞こえているだけかもしれないし。(全く姉貴の奴……面倒な奴等を押し付けてきやがって……) 強引な姉を恨みながら、圭太は大きなため息を吐いたのだった。続きは、文学フリマで発売予定の『激動のゴールデンウィーク』本編をご覧ください。=========================================・サークルTwitter:https://twitter.com/AM24002・2021年5月16日文学フリマ東京「エ-31」にて お待ちしています!=========================================

モンチ03(AM 24:00所属)

ペンネーム:モンチ03所属サークル:AM 24:00モンチ03です、みなさんよろしくお願します。今まではバトルファンタジーを多く書いていましたが、現在は他のジャンルにも挑戦中。ラブコメやスポーツ系なども書いてみたいと思っています。私は基本プロットを作らず、キャラが勝手に動いてストーリーを作っていくタイプなので、設定とか少しだけごちゃごちゃになってしまう事もありますが、その分ストーリーは出来るだけ面白く書こうと意識しています。私が小説を書こうと思ったのは、小説と出会って感情を大きく揺さぶられたからです。初めは友人に勧められた携帯小説で、それから小説にどっぷりハマって沢山の小説と出会いました。沢山のキャラ、沢山の世界、沢山のストーリーに触れて。笑って、泣いて、怒って、感動して……。ああ、小説はこんなにも人の心を動かせるんだ……と気付いて。いつしか自分も小説を書いてみようと思い、その小説を読んだみなさんの心を少しでも動かせることが出来たらなと思っています。=====================================================・サークルTwitter:https://twitter.com/AM24002・2021年5月16日文学フリマ東京「エ-31」にてお待ちしています!=====================================================

餓鬼(キタイハズレ さん)

無料公開されている箇所を読ませていただきました。==============================■ 今回拝読した素敵な作品はこちら餓鬼(作者:キタイハズレ)あらすじページ:https://yurukiyoki-writer.amebaownd.com/posts/16729618?categoryIds=4392641試し読みページはこちらから:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12669186==============================カリギュラに近いでしょうか。確実な恐怖が待ち構えているのに、読み進めるほどに誘惑があり、帰ってこれなくなる。引き寄せられる物語の感想を、この場をお借りして伝えさせていただきます。まずは、冒頭から。何事においても最初のインパクトは大切ですが、この小説は威力がより顕著だと感じます。『私は母を殺しました。食べるために』私がこの言葉から食らったのは、単なるに異質さに留まりませんでした。親は殺せません。親は食べれません。当然です。したくない、も内包しています。しかし、私はここで、自身を振り返ります。他者を傷つけたいと思ったことがないとでも?私の知らないところで、死んでしまえばいいと思った。大切な何かを守ろうとして感情のメーターが振り切れれば、私の身体はとんでもない攻撃性をもち、そこに理性すら同化してしまう。少なからず生きてきたことで、私はそれを自覚しています。状況に支配されれば、私だって人を殺す――それがないとは言い切れない。つまり、殺しはあり得ないと否定しきれず、冒頭の言葉は私にとって身近なところにある。ゆえに、私は冒頭に惹かれ、焦がれ、作者様が描いたその奥へ……。足が勝手に動きます。踏み込んだ先には――冒頭で書かれた、母を殺しただろう『父』の印象が、『彼の娘』の視点から描かれています。父親の一般とは違った部分が、長所として働かず、幼いころから彼を蝕み続けた。父は苦しんでいた。だから、事が起こってしまった。私の頭はまるで、川に流されたかのように、ゆらりといつのまにか疑問を抱きます。詳しく教えて?どうして殺してしまったの?私は小説の奥へ進みだしてから、ずっとそれに呑まれます。そう。父親の内面を少しずつ訴える、娘さんのその語りが、私に疑問をやめさせてくれないのです。しかも、疑問の勢いは衰えず、常にパワーを持っている。そして文章の終わりに書かれたこと。『父親が書記を残した。それを読めば真実が分かる』それを読者に伝え、ここで試し読みは終わりを迎えます。ここまで引き寄せる物語は、積み重ねるものがあるからこそ、成し得ることだと考えます。すごい。こんなに引き寄せる物語があるのか。感嘆し、私は改めて物語を振り返りました。そして、再び私の目に留まるものがありました。『私は母を殺しました。食べるために』気になって仕方がない。作者様がこの言葉にどれだけの意味を込めたのか。私は想像し、考察し、奥へと進みました。『餓鬼』という物語を読めば、まず間違いなく私と同じように、進み、戻れない方がいらっしゃるでしょう。確信と共に、私の感想を締めさせていただきます。【静原認】=========================================・サークルTwitter:https://twitter.com/AM24002・2021年5月16日文学フリマ東京「エ-31」にて お待ちしています!=========================================

ゴールデンウイークの神様

   ゴールデンウイークの神様                                      静原認  二〇二一年、四月三十日。 一人の少年と一人の男性が、酒を飲みながらすごろくをしていた。 自身に見立てたコマを動かして架空の人生を歩み、最終的にお金をたくさんもっていた方の勝利、というありふれたルール。「くく、くくくくく」 本来、二人でやってもおもしろくないはずのゲーム。だが、中学生らしき少年――金剛金治(こんごうきんじ)はグラスを片手に口をゆがませていた。湧き起こる衝動を抑えきれないかのように。「来たよ……! 僕の時代が……!」 いつだって未来を切り開くのは、何が何でも成し遂げんとする強き意思。少年は縮小された人生の盤面に、確かな意義を見出しているというのか。 他とは違う『赤色のマス』に自らのコマを置き、金治は宣告した。「ゴールデンウィークにたどり着いた!! ここが幕開けだ! 今この瞬間、僕の将来は栄光に輝き続ける!」「馬鹿が。たかだか休日のマスに止まっただけで老後が安泰するわけねぇだろうが」 大きく頬を熟させて、しかし率直に言い返すのは、休康正(きゅうやすまさ)――金治の親戚にあたる兄貴分だ。 高級な赤ワインでも入っていそうな丸丸しいグラス。しかし康正が飲んでいるのは金治と同じ、どこぞのコンビニで手に入れた麦酒。気泡から苦味深まる香りがしているだろうに、酔っぱらっている中ではその食い違いが逆にお気に召すのだろうか。「ふんっ! 確かに、いつだって敵は己の中にあるね。だけど、精神的なエネルギーを外に解放する必要が無いとでも? そんなことはない! 内にも外にも強ければそれは無敵と同じなんだよ!」「はっ! 良い子は酒を飲んじゃいけないんだよ。そして、悪い子も酒を飲んじゃいけない。……ひっく」「明らかに話変えないでよ! 僕今ちょっと比喩的なの使って、わずかだけカッコいいこと言ってたでしょう! そしてそもそも酒を飲ませたのは康兄(やすにい)だ!」 立ち上がって康正に指を突き付ける。麦酒がグラスから飛び出るが、金治はぬれてしまった手を気にも留めない。「いい? 僕にとってゴールデンウイークっていうのは山より高く海より深い。神にも勝る尊ぶべき存在なんだ」「五体投地する暇あったら寝て休めよクソガキ」「なんで分かんないんだよ! それだけ大切な日ってことだよ!」 ダンダンと足踏みすら始める金治。この場所が団地の三階であることは、とうに頭から抜けている。「それにしても、何故そんなにゴールデンウイークにこだわるんだ? ガキにとっちゃ夏休みや冬休みの方が余程いいだろうに」「ふっ、これだから素人は」 セリフのわりに金治の目は、野外で遊ぶ少年のようにキラキラと輝きだした。「夏休みなんて僕にとっては一円玉……いや借金! 『ロード・オブ・ヘル』とすら呼んでもいい。だって始まってから二週間は補習になるんだもん僕バカだから。その後すぐにお盆になるけど待ちかまえているのは大量の宿題さ。でも親戚とのうんぬんかんぬんで結局やる気出せなくて、最後の方でえんえん泣きながら必死に鉛筆を動かす羽目になるんだ。冬休みも似たようなものさ。補習から始まり、年末年始は疲れ切って後は宿題。クリスマスなんてどう過ごせと言うんだいっそのこと爆発しろ! それに比べてゴールデンウイークはどう? 補習がない! これが全てさ! 気圧に悩まされることもないし、僕にとっては休める至福なんだ。これ以上のものは無いよ」 熱舌のはてに息切れしている金治。そんな彼に向けられる、康正の生暖かい笑みがあった。「……そうか。お前の言いたいことは分かった。しかしな、夏休みも冬休みも人類にとって間違いなく必要な期間なんだぜ。お前に、そう思えるようになる画期的方法を伝授してやる」「ふん。ご高説たれても無駄さ! ゴールデンウイークに勝るものなんて――」 それは愛と信頼だ。 金治の人生、その価値観から生み出された、五月初頭への確かな想い。 故に、彼の胸中はいま、輝く金剛のごときバリアを張っている。目の前にいる康正がどのような言葉を、夏冬長期休暇の素晴らしさを吐いたとしても!! 立ち上がった康正に優しく肩を触れられて何故か憐れむような視線を向けられても!! 金治の心は乱されな――「前もってちゃんと勉強しろ(笑)。ゴールデンウイーク大好きは逃げの口実だ (笑)」「うるさいよ!! それができたら苦労しないよバーカバーカ!!」 肩に置かれている康正の手がプルプルと震え出しやがったので、結局乱されまくって跳ねのける金治だった。 そんな金治をせせら笑いながら、康正はやれやれと床に座りなおした。「だいたいゴールデンウイークなんて、そんなにいいモノじゃない。お前も大人になれば分かる時がくるかもな……」「ど、どういう意味だよ康兄」「……聞きたいか? いいぜ。話してやるよ。『暗黒時代』と呼ばれる現実を、な」 お酒を一口含んで、目を伏せる。 なぜだろう。康正から郷愁の念というべきか、今まで生きてきて培ったものがあるからこそ出せるオーラを感じる。 意図せず、ごくりと、金治は唾をのみ込んだ。 後に発せられる康正の語りは……割と呂律が回っていなくて、しかしだからこそ想いがある気がした。「端的に言おう。世の中にはゴールデンウイークに働かなきゃいけないやつがいる。表と裏、静と動。俺がどちらの側かは言わずとも分かるだろ? 体制が強化される宿泊施設の警備員。事前に上司に気を遣うシフト希望。得られたたった一日の休日。……だけどな、その僅かな至福の最中、携帯が鳴り響くんだ。『やっぱ来てくれない?』ってな」「……康兄」 康正がはじいたすごろくのルーレットが指すは6。ゴールデンウイークの架け橋を軽々と飛び越えていった。「そんな顔をするな。ガキはガキらしく笑っていればいい。いま酒をあおっているこの俺が、まだ余力がある証拠なんだよ。まぁ、思考が内に入り込んじまっていることは分かっている。もっと他者を想える人間になりたかったぜ」 それでも金治は視線を下げ、拳を握りしめた。 知らなかった。自分が喝采をあげてベッドにへばりついている中、苦しんでいる人がいることを。……いや、不要な情報であると頭から追いやっていた。内に入り込んでしまっているのは金治の方だった。 どうすればいい? せめて目の前で苦しんでいる金治だけは、笑っていてほしい。 やがて、金治は唇を噛みしめつつも、ぱっと顔をあげた。「考えたよ康兄。画期的な方法がある」 対して、康正はふぅっと息を吐いて、頬杖をつく。「意趣返しか? 言っておくが仕事を辞めればいい、なんて言ってくれるなよ? この黄色いシュワシュワワインが飲めなくなっちま――」「彼女を作ってひも生活を送るんだ!!」「……」 文字通り『しーん』となった。静かになりすぎていっそのこと雪が降りそうだった。季節的に有り得ないこの中で、康正の口が緊急停止でぽかんとしている。金治は言いきった後で失態を自覚した。「……あ、いや無理だこれごめんなさい。中学生の僕を、持ち前のファッションセンスで飾り付けて風俗に連行するアグレッシブさがあるのに、結局は美人さんへのアピール前に親に首根っこ捕まれて床を這いずり回るのが康兄だった。そのうえ同窓会で密かに憧れていた女の子に『康正ってあの頃頼りになったよね』って言われた時に、頭を掻きながら『ばか、そんなことねぇよ(照れ)』で誰得になる人だった。ごめんね、決して康兄のスペックは悪くないんだよ。胸にある勇気のベクトルとタイミングを間違えなければ……。康兄ってまるで、学校にある蛇口を上向きにして指で塞いじゃうみたいだよね!! 頑張ってるのにどっか飛んでっちゃうみたな。…………。ひっく」「あからさまに酔ったふりしてんじゃねぇ!! やかましいわ!! てめぇ今日は生きて帰れると思うな!! そのごまかし口調を現実のものに変えて、ひっくひくのほっくほくに変えてやるよ!!」 直後、めんこよろしく回転したすごろくの盤面が、ちゃぶ台をも巻き込んで、金治の頭にクリーンヒット。そのまま一升瓶をぶっこまれた。 ……一気飲みはダメ。そして、ここは三階。   * 翌日。 五月一日。 カーテンを閉めずに飲み明かしたことで朝日が部屋へ侵入し、金治の寝ぼけた目をつつく。 寝返りをうつとベッドの脚に激突し、ようやく覚醒へと至った。「康兄は……そっか、ゴールデンウイークでも仕事って言ってたっけ……」 毛布から抜け出し辺りを見渡すと、ひっくり返っているちゃぶ台が視界に入る。ちゃぶ台の裏面――その上にはラップで包まれた卵焼き。『鶏の結晶、次世代への預託が期限切れだったからあぶっておいた』という置手紙が用意されている。 時間もなかっただろうに世話を焼いてくれるこの兄貴っぷり、女だったら惚れてたかなと一瞬考え、しかし二重の意味で吐きかけた。「……しかし!! 今日はゴールデンウイークの初日の初日!! イコール!! 休期間の残量における憂鬱が1ミリも頭をよぎらない!! はっーはっはっはっはっ!!」  刹那、金治の咆哮に呼応するように、玄関のチャイムが跳ね上がった。(まさか康兄、忘れ物でもしたのか?) その金治の予想は、玄関のドアが勝手に開いた時ですら、いやだからこそ、変わらなかった。(だよね。勝手に玄関の戸を開けるのは康兄くらいしか――)「お邪魔するぞい、若造。威勢のいいホームシックな呼び声じゃのう。しかし、ワシは『はは』ではなく『おじいちゃん』なのでな。言ってみるがよい。『おーっじっじっじいちゃん』と。胸で受け止めるくらいはしてやらんでもないぞ」 ……髭を胸のあたりまで伸ばしているわりに、頭の禿げてる仙人みたいなじじいが現れるのはどういうことなのだろう? 仙人の爺は手を添えた長杖でとんっと、音を鳴らした。「動揺する気持ちは分かる。しかし、どうか落ち着いて聞いてほしいのだ。わしはお前さんに救われに来たのじゃ」「逆でしょ!? そこは『助けに来てくれる』んじゃないの!? そして別に僕は困ってなくてむしろゴールデンウイークで絶好調でむしろ今わけわかんない人に時間をそがれてそういう意味では困ってますどうぞぐるんと回ってお帰り下さい。ついでにゴールデンウイークもぐるんとまわってループをよろしくお願い致します!!」「威勢と覇気があり結構。……しかし、こちらとしても聞いてもらわねば困るのじゃ。事態を放置しておくと世界の危機に関わるのでな」「お帰り下さい」 まったく、何をもって見ず知らずの不法侵入者に耳を貸すというのか。一般中学生の金治はこっそりスマホを手に取った。 しかし、急に現れたこの人は本当に何者なのか。もしや自分はいつの間にか、主人公よろしく壮大な事件に巻き込まれたのだろうか。もしくはインパクト用やられ役モブとして速攻犠牲になってしまうのか。金治は『もしも』を考えて、ぶるっと自らを震わせる。(まぁ、どちらにしてもザ・一般人である僕は逃げの一択だけど) たまーにやってしまう歩きスマホ(良い子はマネしないでください)で得た経験をもとに、1と1と0を入力しきり、通話ボタンに触れようとして――「いいのかのぉ。このままだとゴールデンウイークの存在が木端微塵に吹き飛んで、永久消滅するのじゃが。要は休みが消えるのじゃが」 ぶううん!! と、金治はスマホを窓へ投げた。思いっきり投げた。 スマホは窓を割り外に飛んで行った。主人のために頑張っていたスマホはきっと草葉の陰で泣いてる。「まてやこら話を聞かせろどういうことですか仙人じじい!!」続きは、文学フリマで発売予定の『激動のゴールデンウィーク』本編をご覧ください。=========================================・サークルTwitter:https://twitter.com/AM24002・2021年5月16日文学フリマ東京「エ-31」にて お待ちしています!=========================================

静原認(AM 24:00 所属)

ペンネーム:静原認所属サークル:AM 24:00初めまして、静原認(しずはらみとむ)です。このページを見てくださった方々に、まずはお礼申し上げます。『私個人にとって小説とは何か』という、多少なり心を前衛的にさせる内容をテーマとして、自己紹介とさせていただきます。かつて、私は神々より命を受け、とある世界を断絶していました。留まり続けて進行をやめない、殺戮を繰り返す無数の軍隊。疲弊した弱き者を守るために私ができたのは、広大な大地ごと切り裂き破壊すること。しかし、地中に穿たれた深淵の闇が、地上に這い出て襲ってくるようで、まるで黒いオーロラに見えました。人を超越せんばかりの例えをもって、実は単なるプライバシー保護のために、詳細の方は割愛させていただきます。ただ、十年近く前に、私にはどうしようもなくもがいていた時期があったのです。それを満たしてくれたのが小説というエネルギーであり、それは潤いだけでなく活力として、私を外の動きへと繋げてくれました。精神的に背中を押すというよりは、英知がここに居てくれた感じでしょうか。加えて、私も特定のエネルギーが作れるようになったのか、後に小説を書くようになりました。小説を書きたい。小説家になりたい。世界を作りたいというよりは、傍にいてくれる人を探しているような気がします。深堀りし、想像し、調べ、考え抜いて、少しでもいると実感できるように。しかし、私は主人公ではありませんでした。常人がもてる心、常人がもてる体力。一極集中していない目的と行動理由がそばにあり、目の前の欲求に寄り道する。当たり前のように、日々揺ぎながら歩くのが私であり、時には小説を書く意味に迷うことすらあります。つまるところ、すべてを費やすほどの生きがいではない。成すべきこと、やりたいことがないのは、自由なのだと言えました。そして、だというのに、どこへでも道を選べるその中で、十年近い間ずっと執筆をしているという面白さ。私にとって小説というのは、根幹なのか部位なのかは分からず、これからも変化し得るもの。そして、曖昧なくせに、決して切っては切り離せないものです。だからこそ、こうして機会をいただき、話をさせていただく今があります。ぜひ、皆さんの物語を読ませていただきたいです。私の小説への想いと共に、皆さんの物語に込められた力を知りたいです。私が所属しているサークル『AM24:00』のメンバー共々、どうぞよろしくお願いいたします。=========================================・サークルTwitter:https://twitter.com/AM24002・2021年5月16日文学フリマ東京「エ-31」にて お待ちしています!=========================================

音隣(AM 24:00 所属)

ペンネーム:音隣所属サークル:AM 24:00はじめまして、音隣と申します。呼び方はありません、お好きな呼び方でどうぞ。私は普段、『AM 24:00』というサークルに所属し、主に進捗管理、時々イラストを嗜んでいます。『AM 24:00』自体が、各々が楽しいと思うことを行うサークルなので、私は、小説は発表していません。なので、こちらでは、少し自分の考え方についてお話できればなと思います。【 いてもいなくても一緒なら 一緒にいるよ(『四月は君の嘘』より)】私が好きな作品、『四月は君の嘘』での印象的なセリフです。サークルメンバーはみんな、それぞれ色々なことが得意で、このサークルがなくてもどこででも輝いていける人だと思っています。なので、このサークル活動はもしかすると、僕のわがままなのかもしれません。ですが、『彼らとだから何か出来ることがある』と信じています。それを証明するために、活動しているとも思います。そんなエンタメの力を信じている私ですが、時に悩むこともあります。大きくは、自然災害等。小さくは、就職活動等。「エンタメなんて、あってもなくても同じなんじゃないか?」そんな言葉がうっすらと聞こえてくるのです。そんな時、同じように決まって聞こえてくる声があります。「いてもいなくても一緒なら 一緒にいるよ」どんな感情からくる言葉か。それは人それぞれだと思います。それでも、願うならば━━私たちの作品が、あなたにとって一緒にいたいと思えるような、そんな作品になりますように。【音隣】=====================================================・サークルTwitter:https://twitter.com/AM24002・2021年5月16日文学フリマ東京「エ-31」にてお待ちしています!=====================================================