『孤独な恋人』(大坪命樹様)
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あらすじといたしましては
大学生の森田望一が出生の謎を抱えながら、成人式で告白した同じ学科の佃美穂と交際を始めるが、デートを重ねるうちに、望一は祖父から出生の謎について、徐々に痛ましい事実を教えられていく。出生の謎を知った望一は、みずから背負った業とも言える因縁を、その後どのように解消していくのか
とのことらしいです。
一、プロローグ・平成二十七年一月、森田望一
冒頭でずっと好きだった人と結ばれる主人公・望一。
しかし彼は奇妙な夢を見ます。
自分が昆虫になって本能のままに雌と交尾する夢を。
そして交尾の最中に雌に頭から食い殺される夢を。
佃美穂との交際が破綻するという暗示でしょうか、それとも……
二、平成六年十二月、佐藤護
彼自身の記憶には父母との楽し気な思い出などありません。
彼の両親は実父の浮気により早々に離婚し、母親はホステスとしてずっと働いていました。
食事は全て既製品、手作り料理などありえないという環境。
もちろん、母の愛がなかったとは言い切れません。
けれど望一にとってそれは過酷な環境でした。
義務教育を受けていた頃の護にとって母親が見ず知らずの男と一晩の関係を繰り返すというのは劣等感と罪悪感を与える要因でした。
さいわいにも護に対するいじめは起こらなかったようですが、護から友達を作ることがができず、また他人が護に関わることもありませんでした。
一と二で大きな時間のズレがありますが、これはもしかして佐藤護が森田望一の実父なのではないでしょうか。
少なくともこの作品は望一の出生の謎を中心としていることを考慮すれば佐藤護も森田望一の人生におけるキーパーソンであることは疑いようのない事実でしょう。
また、作者である大坪命樹様によれば”多元焦点化の技法を使い殺人をテーマに盛り込んだ力作”であるらしいので、おそらくは複数人の視点から望一の過去と因縁と業を暴いていくと考えられます。
さらに、望一と護とでは大きな落差があります。
なぜなら前者は順風満帆な人生で恋人を手に入れたのに対し、後者は幼少期から不幸に襲われしかも自分が不幸であることすら認識できないほどに追い詰められているからです。
この落差にこそ本作の醍醐味が凝縮されているのかもしれません。
自分の過去を知らない望一と過去に苦しめられた護。
幸せの絶頂にある望一と幸せからは程遠い護。
なんにせよ、試し読みまでだと断片的な情報しかありません。
続きは会場で冊子を買って読んでみましょう!
レビュワー:キタイハズレ(文芸高等遊民所属・サイトオーナー)
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